読了本-恋愛寫眞 もうひとつの物語
これはたいそうな形をとった盛大なラヴレターだ
別れはいつだって
思いよりも先に来る。
それでも
みんな微笑みながら言うの。
さよなら、またいつか会いましょう。
さよなら、またどこかで、って。
-市川拓司(2008)
笑ってしまうほどにかわいらしい手紙で、なんだか心があったかくなります。切ない思いごと心にぬくもりを届けてくれる物語でした。
静流も誠人もみゆきもこの世界のどこかに本当にいるんじゃないかと思うほど私たちに寄り添ってくれる。素朴で、コンプレックスを持っていて、片思いしている。苦しいほどの想いを抱えて何でもないようにふるまってしまうことは誰にでも経験があるのではないだろうか。特別になりたいのになれなくて、好かれたいのに嫌われたくなくて、背中を押しては後悔して、そんな日々は甘酸っぱくて愛おしい。
時間を止めてこのまま大切に胸の中に残しておきたい。儚くて、ふとした衝撃で壊れてしまいそうな、優しい感情ごと包んでおきたい。そんな瞬間を彼らは写真に収めて零れ落ちそうな水を手で掬い取るように切り取る。写真でつながれる思いも、記憶もかけがいのないものだった。
不思議で嘘つきな静流は多くの読者を魅了し、惹き付ける。かくなる私もその一人だ。かわいらしく純粋な彼女に恋をした。もう一度会いたくなってこの本を何度でも開くことになるだろう。
だから。微笑みながらここに記しておきましょう。
「さよなら、またいつか会いましょう。
さよなら、またどこかで」