アイシテ

 

手を振ったあの日キミは笑った

陽だまりに咲く花が、押し花のような儚さを持ち合わせているような

そんな。そんな笑顔で。

 

 

 

ああ、そうだ

出会った時からそうだった

そよ風のように現れたキミは僕の心を「バン」と打ち抜いた

音がしたからそれはたぶん本当にキミは銃を持っていたのだろう

それも、さも何でもないように余裕そうだったから打ちなれている

僕は警戒心の欠片も持ち合わせていなくて分かりやすくネギをもって踊っていたはずだ

 

 

それから会うたびにキミは銃を構えて遠慮もなく打ってくるもんだから

こっちは傷だらけで、歩くのもやっとなのに

キミはいつだって楽しそうに笑ってた

このままじゃ僕の大切な命に関わる

キミは僕が白旗を必死にこしらえてるのを見てた

そう。大砲を抱えながら。最後の発砲の準備はもう完璧な様子だ。

「さあ早く、これ以上は待てないわ」

仕方がないから渾身の白旗は矢にくくり付けて精いっぱい弓を

満足そうに矢をキャッチしてへし折ったように見えた

 

 

僕はそれから毎日矢をこしらえた

でもキミは首を振った

「私がほしいのはこれじゃないの」

後姿を見つけたら吹き矢を用意したり

矢の素材にこだわってみたり

負けられな戦いは続いた

 

 

残りの体力も少ない

あげられる矢もあとひとつ

もうへとへとになりながら矢を握りしめた

ピンクのリボンもつけたんだ

こぼれない程度の想いを乗っけて

 

「キミに渡したいものがあるんだ」