タッキー

 

 

さよならを決めたあなたの心はどこを探しても打ち壊せなくて

完璧主義なあなたらしく、完璧で、本当に変わらない。

 

「馬鹿ね」ってたくさんの人に言われて

「もったいない」なんて言われて

それでも真っすぐなあなたがとても痛々しかった。

頑固で、支えてくれた人に相談もせず、頼りもせず

苦しいなんて言葉を聞かせてもくれない。

誰かに指をさされても、悲しい顔をされても

全部抱え込んで。

全然平気な顔してなに笑ってるの。

笑って、ないでよ

そんな苦しいのに笑わないでほしかったなあ

あなたの決断にいつの間にか重荷になっていたはずの私たちまで組み込まれてて

もう…

自分のための決断、なら、もっと勝手でいいのに

勝手な決断するくせに勝手に抱え込まないでよ

多くの人の想いごとしょいこんで顔をくしゃくしゃにして苦笑して

誰かの事ばかり考えて、悩んで、自分をすり減らして

考えた結果がこれなの?

 

ああ、もっとあなたを見ていたかったの。

ステージで輝いていて、光をまとって、空気ごと自分のものにして

その場にいる人全員をくぎ付けにして

手も届かない、そんなあなたが大好きだった。

一挙一動に感動して、涙して、笑って、幸せな気持ちをくれた。

数時間のためにお金をためて、会えるチケットの争奪戦に挑んでさ、きれいにして、会える日を楽しみにして…生きる糧はあなただった。

 

もう、遠くから姿を見ていることも許されないなんて、信じられないの。

 

もう、手を伸ばすことさえもできなくなる、

 

でも、大好きなあなたの決めたことを否定しくなる自分が一番嫌で、信じたくなくて

 

あなたを応援してきたんだから、

 

決断も応援させてください。

 

時間はかかるけど、応援したいのです。

 

だから、重荷かもしれないけど、登場するかもしれないあなたの未来を期待しててもいいですか?

 

 

読了本-恋愛寫眞 もうひとつの物語

 

これはたいそうな形をとった盛大なラヴレター

 

別れはいつだって

思いよりも先に来る。

それでも

みんな微笑みながら言うの。

さよなら、またいつか会いましょう。

さよなら、またどこかで、って。

    -市川拓司(2008) 

 

 

 笑ってしまうほどにかわいらしい手紙で、なんだか心があったかくなります。切ない思いごと心にぬくもりを届けてくれる物語でした。

 静流も誠人もみゆきもこの世界のどこかに本当にいるんじゃないかと思うほど私たちに寄り添ってくれる。素朴で、コンプレックスを持っていて、片思いしている。苦しいほどの想いを抱えて何でもないようにふるまってしまうことは誰にでも経験があるのではないだろうか。特別になりたいのになれなくて、好かれたいのに嫌われたくなくて、背中を押しては後悔して、そんな日々は甘酸っぱくて愛おしい

 時間を止めてこのまま大切に胸の中に残しておきたい。儚くて、ふとした衝撃で壊れてしまいそうな、優しい感情ごと包んでおきたい。そんな瞬間を彼らは写真に収めて零れ落ちそうな水を手で掬い取るように切り取る。写真でつながれる思いも、記憶もかけがいのないものだった。

 不思議で嘘つきな静流は多くの読者を魅了し、惹き付ける。かくなる私もその一人だ。かわいらしく純粋な彼女に恋をした。もう一度会いたくなってこの本を何度でも開くことになるだろう。

 

 

だから。微笑みながらここに記しておきましょう。

「さよなら、またいつか会いましょう。

 さよなら、またどこかで」

 

 

 

 

アイシテ

 

手を振ったあの日キミは笑った

陽だまりに咲く花が、押し花のような儚さを持ち合わせているような

そんな。そんな笑顔で。

 

 

 

ああ、そうだ

出会った時からそうだった

そよ風のように現れたキミは僕の心を「バン」と打ち抜いた

音がしたからそれはたぶん本当にキミは銃を持っていたのだろう

それも、さも何でもないように余裕そうだったから打ちなれている

僕は警戒心の欠片も持ち合わせていなくて分かりやすくネギをもって踊っていたはずだ

 

 

それから会うたびにキミは銃を構えて遠慮もなく打ってくるもんだから

こっちは傷だらけで、歩くのもやっとなのに

キミはいつだって楽しそうに笑ってた

このままじゃ僕の大切な命に関わる

キミは僕が白旗を必死にこしらえてるのを見てた

そう。大砲を抱えながら。最後の発砲の準備はもう完璧な様子だ。

「さあ早く、これ以上は待てないわ」

仕方がないから渾身の白旗は矢にくくり付けて精いっぱい弓を

満足そうに矢をキャッチしてへし折ったように見えた

 

 

僕はそれから毎日矢をこしらえた

でもキミは首を振った

「私がほしいのはこれじゃないの」

後姿を見つけたら吹き矢を用意したり

矢の素材にこだわってみたり

負けられな戦いは続いた

 

 

残りの体力も少ない

あげられる矢もあとひとつ

もうへとへとになりながら矢を握りしめた

ピンクのリボンもつけたんだ

こぼれない程度の想いを乗っけて

 

「キミに渡したいものがあるんだ」

 

 

 

読了本-砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない

 

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない

A Lollypop or A Bullet

作・桜庭和樹

 

 

 

題名の通り、

砂糖菓子のように甘く、優しく、グロテスクな物語だ。

 

 桜庭和樹さんの小説を読んだのはこれが初めてだった。

 新聞記事からの抜粋から始まったこの物語は、妙にリアルで、それでいて分かりやすく変な登場人物に囲まれている。猟奇的で、現実には起こりそうもないことだからこそ、そこにあるのは気味が悪いほどのリアルなのだ。

 人は話せば分かる、この世界は美しい、そんな誰もが描きそうな淡い期待をぶったぎる。願いも期待も何にも届かない世の中はあるのだ。抜け出そうとする暗闇は足掻けば足掻くほどに濃く深くなっていく。そんな絶望を生き抜く小さな女の子の戦闘記だ。

 子供は大人に守られなくてはならないのだ。大人がただ歳を重ねただけの大きな子供だとしても、何も知らない愛と憎しみの区別のつかない幼い子供には、本書にもある通り「安心」が必要なのだ。

 

 かつての私がそうであったように、子供の認識できる世界は驚くほど狭く、そしてそこから出ることはそうとうに難しい。信じられるものは数えるくらいしかなく、頼れる人など一人でもいたら幸運なのだ。広い世界があるんだ、そこでは息ができなくても別にキミの生きられる場所があるから。

 ほとんどの子供に与えられる世界はひとつだ。一枚岩でつながっている。そこで受け入れられないと自分の価値を見失ってしまうのだ。だが、今や世界はグローバル化しどこにだって行ける、そう月にだって。そこがだめでもいいんだ。間違っても、転んでも、明日さえあれば、傷だって治るし、記憶は薄れていく。

 

 

 生きてほしい。死なないでほしい。

 この物語を読んで感じた一番強い感情だ。

 

 

甘い甘い実弾じゃない弾丸は彼女の中に生き続ける。

どこまでも不器用で大人になれなかった藻屑はついに自由を手に入れたのかもしれない。

 

 

 

 

 

読了本-砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない

 

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない

A Lollypop or A Bullet

作・桜庭和樹

 

 

 

題名の通り、

砂糖菓子のように甘く、優しく、グロテスクな物語だ。

 

 桜庭和樹さんの小説を読んだのはこれが初めてだった。

 新聞記事からの抜粋から始まったこの物語は、妙にリアルで、それでいて分かりやすく変な登場人物に囲まれている。猟奇的で、現実には起こりそうもないことだからこそ、そこにあるのは気味が悪いほどのリアルなのだ。

 人は話せば分かる、この世界は美しい、そんな誰もが描きそうな淡い期待をぶったぎる。願いも期待も何にも届かない世の中はあるのだ。抜け出そうとする暗闇は足掻けば足掻くほどに濃く深くなっていく。そんな絶望を生き抜く小さな女の子の戦闘記だ。

 子供は大人に守られなくてはならないのだ。大人がただ歳を重ねただけの大きな子供だとしても、何も知らない愛と憎しみの区別のつかない幼い子供には、本書にもある通り「安心」が必要なのだ。

 

 かつての私がそうであったように、子供の認識できる世界は驚くほど狭く、そしてそこから出ることはそうとうに難しい。信じられるものは数えるくらいしかなく、頼れる人など一人でもいたら幸運なのだ。広い世界があるんだ、そこでは息ができなくても別にキミの生きられる場所があるから。

 ほとんどの子供に与えられる世界はひとつだ。一枚岩でつながっている。そこで受け入れられないと自分の価値を見失ってしまうのだ。だが、今や世界はグローバル化しどこにだって行ける、そう月にだって。そこがだめでもいいんだ。間違っても、転んでも、明日さえあれば、傷だって治るし、記憶は薄れていく。

 

 

 生きてほしい。死なないでほしい。

 この物語を読んで感じた一番強い感情だ。

 

 

甘い甘い実弾じゃない弾丸は彼女の中に生き続ける。

どこまでも不器用で大人になれなかった藻屑はついに自由を手に入れたのかもしれない。

 

 

 

 

 

イロナシ

白黒な花が道端に咲いてた

その花はどの花にもない魅力があった

美しく、そして高潔だ

どんな色よりも力強さがある

見えないものにこそ想像力が働く

自分の思う一番の花にそれはなる。

 

何にも臆さないその姿勢がかっこいい

臆さない、でもおごらない。

比べる必要のない強さを持つ

そこには匂いもないし、花粉も飛ばない

 

その花はもしかしたら透明かもしれない

存在が認識できるだけで、そこに色があるわけじゃない

凛と咲く

風に吹かれて、雨に打たれて

誰のものでもない

その花の純粋な尊さと生きていきたい

 

 

 

 

アマオト

ポツンポツンと空気が波動を起こす。

落ち着くような、ざわつくような

何度も何度も胸を動かす。

音も、色も、匂いも、彼女たちには関係ない

踊るように歌うようにこの地に生れ落ちる

透明な彼女たちに会える確率はなかなか不確定で

嫌われ者の彼女たちはふいに姿を現す

ふふ、微笑みながら

明るい朝にも、疲れた夜にも

彼女たちは微笑む

 

恋い焦がれるような、煙たがるような

そんな不安定な私たちだけど

本当は彼女たちがいないと息もできない

ふふ、微笑むあなたに会いたい

そんな静かな淡い朝

優しく包み込むような、激しく打ち付けるような

そんなあなたに「ありがとう」