ソレカラ

 

出会った日から時間はすぎ

キミは僕よりも大人になってた

あの日肩で揺れてた髪の毛はいつの間にか伸びてて

振り返ったキミの赤い紅い口紅が綺麗だった。

とてもきれいで、胸が痛いんだ

 

あの日の僕と何が違うだろう

あの日はそう雨が降ってて

虹がでるかなと話をして

それから、それから、僕は…

 

変わってゆく関係と過ぎる季節は結構似てて

それがなんか切なくて

雪でも降ればいいのに、そしたら全部隠してくれるのに

気持ちのいい青空がやけに蒼くて

季節を運ぶ風がもう終わりだと告げてる。

 

あの日のキミと何が違うだろう

あの日は確か肌寒くてさ

僕の上着を着たキミを守りたかった

それなのに、それなのに、キミを…

 

守るべきだったのはちっぽけな僕のプライドじゃなくて

笑顔で僕を見上げるキミで

そんなこと知ってたのに、気づけなかった。

もっと、もっと、大切に…

 

さよならと口にしたキミはきっと今までで一番大人で、きれいだった。

 

マンマル

 

街がゆっくりと姿を変えるころ

あなたは顔を出す。

そうね、今日は機嫌がいいみたい。

 

ふわふわ優しいお友達も今日はいないのね

最近は話す人が減ったって?

そうかもしれない、だってきみよりも遠い場所の人と話してるらしいから

それが幻想だとも知らずにね。

それは滑稽だけど仕方ないの。

 

この世界には色々な決め事があって、時間は一定に過ぎてることになってる

あなたも一定の時間軸に沿って形を変えてることになってるのよ

機嫌とか、感情とか、そういった不安定なものが混じってる

それは少し面倒でしょう?

 

マルマルなきみが本当は真ん丸じゃないだとか

街の明かりは汚いものを隠してるとか

そんなことは重要じゃあなくて

もっともっとあなたと話がしたいんだ。

 

マンマルなきみが本当は真ん丸じゃないだとか

明日の降水確率とか

そんなくだらないことじゃあなくて

もっともっとあなたの言葉が知りたいんだ。

 

 

 

テンセイ

 

今日僕は死んだ。まあ正確には20時間前に。

 

息が詰まる衝撃と、大きな音と、眩しい光に包まれた瞬間手のひらサイズの心臓は動きを止めた。予想もしなかったことだが、それは想像していたよりも簡単に特に重要な事でもないかのように起こった。人が死ぬというのはこうもあっけないものなのか。

生きていた(生命体として世界に存在していた)頃実体としていた身体はもはや自分である確信が持てない。

ましてや、自分の死を悼んでくれ涙を流している人への感情や呼ばれている名前への実感が持てない。その人は本当に僕の知り合いなのか、どんな意味を持つ涙なのか。本当に僕はそんな名前だったろうか。

 

本当に僕はこの世界に存在していたのか。

 

どんどん薄れて分からなくなる。

生きている人の記憶の中の僕はどんな顔でどんな人間だったろうか。

この世界でもがきながらも生きた意味はあったのか。

 

総理大臣でも、大統領でも、アイドルでも、社長でも、世界の中心で愛を叫んだわけでもない。とゆうか世界の中心とはどこなのか。

 

 

 

 

 

風の香り、空の色、葉っぱの緑、本の歴史のにおい、服の柔らかさ、リモコンの信号、赤の情熱、責任の重圧、車の足音、青の蒼さ。もう何もない。

僕の手は何も掴めなかった。

僕のいない世界は今日も順調に時を刻んでいる。

 

 

 

「本日はお忙しい中、亡き…」

 

 

 

 

…なんだこれ。

 

何なんだよ。これ。

別に夢があったわけでもない。叫ぶべき愛があったわけでもない。

でも、でもさあ。僕の人生これで終わりかよ。

 

愛でも叫んでおけばよかったか。

世界は無理でも東京の真ん中くらいだったらいけたな。

 

 

 

あれ、俺、どんな人生送ってきたっけ?

 

誰の事を愛してたんだろう。

 

誰の事憎んでたっけ、

 

ここ、どこだっけなあ

 

 

 

名前…、なまえ?ナマエってなに、

 

じぶんは、ここは…暗い、何も分からない…

 

 

 

…息ができない

 

 

くるしい、いたい、まぶしい…

 

 

 

 

「おめでとうございます!」